法定相続人とは、その名のとおり、法律(民法)で定められている相続人のことです。
もう少し詳しくみていきましょう。
財産の所有者は自由にその所有物の使用、収益、処分をする権利が保障されています。(民206条)
つまり、自分の財産を誰にどれだけ相続させるのかといったことは、その所有者のまったくの自由ということになります。
ある人が亡くなった際、その故人が生前、遺言書で誰に相続させるのか意思表示をしていれば、法定相続人よりもその最終意思が優先されます。
裏を返せば、故人が遺言書を残していなかった場合には、この法定相続人が相続することになります。
法定相続人の範囲
では、法定相続人に該当するのは、どういった人なのでしょうか。
民法では、被相続人(故人)を中心とした関係性、続柄によって順位が定められています。
配偶者
故人に配偶者がいれば、配偶者は常に相続人になります。(民890条)
つまり、配偶者(夫もしくは妻)が単独で全部の財産を相続するという訳ではなく、以下に挙げる順位の相続人がいる場合には、常にその人とともに相続するという意味です。
子(第一順位)
故人に子供がいれば、子供が第一優先に相続します。(民887条)
故人に配偶者がおらず、子供のみしかいなかった場合は、子供のみがすべての財産を相続し、反対に配偶者がいれば、配偶者と子供がともに相続します。
また、故人が亡くなる前にその子供が亡くなっていた場合(廃除や欠格者である場合も含む)、かつその子供に子供がいる場合、つまり故人から見て孫がいれば、孫が相続します(代襲相続)。
さらに、故人が亡くなる前にその孫もなくなっており、かつその孫に子供がいれば、その子供、つまりひ孫が相続します(再代襲)。
代襲相続に関しては、ひ孫までの再代襲までで、ひ孫も存在しない場合は、次の順位に相続権が移ります。
直系尊属(第二順位)
故人に子供がいない場合、さらに上記代襲者も存在しない場合には、直系尊属、つまり故人の親が相続人になります。 (民889条1-①)
民法では、この直系尊属に関しては、親等の近い者が優先されるとの記載のみで、故人の親いずれも存在しない場合には、存命かどうかは別として、さらにその直系の親へと続きます。
(故人の)兄弟姉妹(第三順位)
故人に子供がおらず、かつ両親等直系尊属も存在しない場合には、次に、故人の兄弟姉妹が相続人となります。 (民889条2)
故人が亡くなる前に、兄弟姉妹が亡くなっていた場合には、その子供、つまり故人の甥や姪が相続人となります (代襲相続) 。
ただし、兄弟姉妹の代襲相続はその子供までで、上述、子の場合とは異なり、再代襲はありません。
以上の法定相続人の範囲をまとめますと、以下のようになります。
順位 | 相続人 | 配偶者がいる場合 |
第一順位 | 子、またはその代襲者 | +配偶者 |
第二順位 | 直系尊属(故人の親) | +配偶者 |
第三順位 | 故人の兄弟姉妹、またはその代襲者 | +配偶者 |
相続人の不存在
上述してきました法定相続人は、第四順位、第五順位・・と続いていくわけではなく、 第三順位までです。
では、第三順位までの法定相続人が存在しなかった場合はどうなるのでしょうか?
特別縁故者への相続財産の分与
第三順位までの法定相続人が存在しなかった場合、故人の財産は法人となり (民951条) 、利害関係人又は検察官の請求により、家庭裁判所が管理人を選任します (民952条) 。
そして管理人は一定期間、公告を行い、その間に相続人が権利を主張しなかった場合は、家庭裁判所は下記のような特別縁故者からの請求によって、財産を分与することができます。 (民958条の3)
- 被相続人(故人)と生計を同じくしていた者
- 被相続人の療養看護に努めた者
- その他被相続人と特別の縁故があった者
これらの特別縁故者に、債務等精算を行って残った財産の全部又は一部を与えることができます。
国庫への帰属
上記、特別縁故者も存在しない、又は存在していても請求の申立をしなかった場合、若しくは特別縁故者に分与されてもなお、残る財産がある場合、その財産は国庫、つまり国に帰属することになります。 (民959条)
以上のように、遺言書が無ければ、誰が相続人となるのかは法律で厳密に定められています。
相続人が誰なのか、身内だからわかっていると思っていても、見知らぬ相続人が存在するといったこともありますので、相続人の範囲の確定は、戸籍等を収集し、漏れの無いように慎重に行う必要があります。
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