当サイトの他のページで、相続人が行方不明の場合に遺産分割協議を進めるための法制度2つをお伝えしました。

一つは、不在者財産管理人制度ともう一つは、このページで取り上げる失踪宣告制度です。

失踪宣告とは?

失踪宣告とは、不在者(住所又は居所を去ったもの)の生死不明の状態が一定期間、継続していて死亡の可能性が高い場合に、家庭裁判所の審判によって、法律上死亡したとみなす制度です。 (民法30条、31条)

失踪の種類は、次のように普通失踪特別失踪に分類されます。

普通失踪

普通失踪とは、音信不通による生死不明の場合で、例えば、家出や失踪等で連絡がつかなくなった状態が継続している場合です。(民法30条1

要件

  • 最後に不在者の生存が確認された時から7年が経過したこと
  • 利害関係人(不在者の配偶者、相続人、債権者など)から失踪宣告の請求があること

特別失踪

特別失踪とは、戦地への従軍、船舶の沈没等の死亡の可能性を高めるような危難にあった場合です。 (民法30条2

要件

  • 危難が去った時から1年が経過したこと
  • 利害関係人(不在者の配偶者、相続人、債権者など)から失踪宣告の請求があること

申立手続き

失踪宣告の申立手続きは以下の要領です。

申立先

不在者の住んでいた住所地又は居所地の家庭裁判所

申立人

利害関係人(不在者の配偶者、相続人、財産管理人、受遺者等、失踪宣告を求めるについての法律上の利害関係を有する者)

申立にかかる費用

  • 収入印紙800円
  • 連絡用の郵送費
  • 官報公告料4816円(裁判所の指示があった後)

必要書類

  • 不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 不在者の戸籍附票
  • 失踪を証明する資料
  • 申立人の利害関係を証明する資料(親族関係であれば戸籍謄本(全部事項証明書))

家庭裁判所による調査

失踪宣告の申立後、家庭裁判所調査官によって、申立人や失踪者の親族に対して調査が行われます。

公示催告

申立をすれば、すぐに失踪宣告の審判が下されるわけではありません。

家庭裁判所調査官の調査終了後に、普通失踪の場合には3ヶ月以上特別失踪の場合には1ヶ月以上の期間、「不在者は生存の届出をするように、もしくは不在者の生存を知っている人はその届出をするように」官報や裁判所の掲示板に催告を行います。

その公示催告期間内に届出が無いことを確認してから失踪宣告がなされます。

失踪宣告がなされると、審判書謄本が送達されますが、申立からこの審判書謄本が送達されるまでの期間は、あくまで目安ですが、約6ヶ月ほどかかります。

その後、2週間の期間内に不服申し立てがなければ確定となります。

戸籍の届出

失踪宣告がなされると、自動的に戸籍の記載が変更されるわけではなく、申立人側で役所に失踪の届出を行わなければなりません。

失踪の届出の際には、審判書謄本確定証明書を提出します。

確定証明書は失踪宣告が確定したことを証する書類で、裁判所に申請を行い、取得します。

審判書謄本確定証明書が揃えば、下記いずれかの市区町村役場に失踪届を行います。

  • 不在者の本籍地
  • 申立人の住所地

なお、失踪届の期限は、審判が確定してから10日以内です。(戸籍法94条

失踪宣告されるとどうなるのか?

失踪宣告を受けた者は

  • 普通失踪生死不明の7年間が満了した時
  • 特別失踪危難が去った時

死亡したものとみなされます。民法31条

これは、例えば、家庭裁判所から失踪宣告を受けた日とか、あるいは市区町村役場に失踪届を提出した日などではなく、失踪宣告を受けた日から上記それぞれの時点に遡った日が死亡日とになりますので、留意が必要です。

失踪宣告を受けると、それぞれの時点から、法律上死亡したとみなされますので、その時点から不在者自身の相続が開始し、また、配偶者がいれば婚姻関係が解消します。

失踪者自身を被相続人とする相続が開始される

失踪宣告を受ければ、失踪者は法律上、死亡したものとして扱われますので、一般の死亡と同様に、相続が開始します。

ただし、失踪宣告とは、失踪者が従来住んでいた場所を中心とした法律関係について、失踪者が死亡したとみなす制度です。

仮に、実際には生存していて、他の住所地で購入した不動産等があっても、その不動産は、失踪宣告によって開始した相続の対象財産には含まれません。

失踪者が別の被相続人の相続人となる場合

今度は、失踪者が別の被相続人、例えば、失踪者の父親が亡くなり、失踪者がその子供で相続人になるケースを考えてみましょう。

この場合、失踪宣告による死亡時期が、被相続人の死亡の先後いずれかによって、影響が出てくる場合がありますので、留意が必要です。

失踪者の死亡時期が被相続人の死亡よりも前になった場合

失踪宣告の審判の結果、失踪者の死亡時期が、被相続人の死亡よりも前になった場合、被相続人の相続開始時点で、失踪者はすでに死亡していることになります。

その結果、失踪者に配偶者や子がいなければ、他の相続人だけで遺産分割協議が行えます。

一方、失踪者に子がいる場合には、代襲相続の問題となり、その子が代襲相続人となって遺産分割協議に参加することになります。

失踪者の死亡時期が被相続人の死亡よりも後になった場合

反対に、被相続人の死よりも後になった場合には、相続開始時点で失踪者も相続人だったことになりますので、被相続人の遺産は失踪者からさらに失踪者自身の相続人に承継されることになります(数次相続)。

例えば、被相続人である父親をA、相続人をその妻Bと子のC,Dとします。

Cは失踪宣告を受けた失踪者であり、かつ、配偶者Eと子Fがいるとします。

この場合、失踪者CはAの相続人であり、かつ、E、Fの被相続人でもあります。

よって、B、D、E、Fで遺産分割協議を行うことになります。

失踪者が生存していたことが判明した場合

失踪宣告は、申立により、法律上死亡したとみなすという制度ですので、実際に肉体上の死を確認したわけではありません。

よって、失踪宣告を受けた失踪者が実際には生存していた・・ということもあり得ます。

このように、一度、裁判所から失踪宣告を受けた不在者の生存が判明した場合でも、そのままでは失踪宣告の効力は失われません。

失踪宣告の効力を取消すには、改めて、家庭裁判所に失踪宣告の取消しを請求する必要があります。(民法32条1

失踪宣告が取消された場合、遺産分割した財産はどうなるのか?

失踪宣告により遺産分割がされ、処分された失踪者の財産はどうなるのでしょうか?

失踪宣告の取消しが認められれば、初めから失踪宣告はなかったものとされ、相続は開始せず、婚姻は解消しなかったものとされます。

ただし、当事者が取消前に、失踪者が生きていることを知らずになされた遺産分割協議については、その効力に影響を及ぼさず、無効とはなりません。(民法32条1

しかし、遺産分割協議自体は無効とはならないものの、失踪宣告によって財産を得た者(相続人、受遺者)はその権利を失い、現に利益を受けている限度(現存利益)においてのみ、その財産を返還する義務を負います。 (民法32条2

現存利益とは、そのままの形、または形を変えて残っている利益のことです。

つまり、現在残っていない財産は返還しなくてもよいことになりますが、例えば、相続した不動産を売却して得た金銭や生活費や借金の返済等にあてた金銭は、返還する義務がありますので、留意が必要です。

以上、失踪宣告についてお伝えしてきました。

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